メニュー 蕭寥亭 検索

開店休業の記

今日の本

おばけのこ

 『おばけのこ』(テルヒ・エーケボム:著 稲垣美晴:訳 求龍堂)、読了。

 フィンランドの絵本です。原作は2013年に出たものらしいです。

 1ページ1枚の絵。それが200枚以上ですから絵本としては長編。ときどき絵の下に短い言葉が添えられています。ひらがなで書かれています。なので、小さい子どもでも読めることは読めると思いますが、「こころがきずだらけになったから」で始まるこのお話は、子どもより大人向けのような気がします。

 山のそばの闇に覆われた深い森。ずっと昔、悲しいことがあったといううわさのその森に、ある女性が一人ぼっちで暮らし始めます。そこで出会ったものとは。

 灰青の濃淡で描かれたモノクロームの絵。静謐である一方、とても寂しい雰囲気。女性の心象が表現されているのか、寒々とさえ感じます。

 あえて崩したような頭身のバランス。一見、木らしくない、デフォルメされた木々が立ち並ぶ森。古代の絵物語のようでもあります。

 独特で不思議な世界。だれでも楽しめる、というものではないような気がしますが、わたしは好きです。

 冒頭、古今和歌集878番「わか心なくさめかねつさらしなやをはすて山にてる月を見て」が引用されていて、少し驚きましたが、これは著者によるものでしょうか?