『戦争とデータ』(五十嵐元道:著 中央公論新社)、読了。
副題が「死者はいかに数値となったか」。内容がややつかみにくい本で、説明もしにくい本です。
戦争での死者、特に民間人がどれだけ、どのような状況でなくなったのか。そうした戦争データがなぜ必要とされるようになったのか。それはどのように調査が行われ、把握されるものなのか。
そうした問題の歴史的な展開過程と調査の手法や分析の解説が中心です。著者は国際関係論の研究者。
興味深い内容なのですが、1冊の本としては焦点があちこちに散ってしまったような印象で、難しい書き方をしているわけでもないのに、なんだか読みにくい感じです。もったいない気がします。別のアプローチでまたお願いしたいです。
戦争での死者の把握は民間人に先行して、まず軍人を対象として始まったのですが、国際規範化されたのは19世紀後半とそれほど昔のことではないそう。ヨーロッパでの人道主義的な考えから広がったのですが、当然に危険な戦場での実状調査はやはり困難であり、加えて政治的・感情的な非協力・妨害もつきもので、正確なデータ、というものを得ることが事例を通して簡単ではないことが理解できます。