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開店休業の記

今日の本

サーカスの子

 『サーカスの子』(稲泉連:著 講談社)、読了。

 ノンフィクション作家である著者は、1年足らずの短い期間ではありますが、少年時代にサーカスで団員たちと起居を共にした経験があるそうです。

 それから40年近い時が経過した近年、ある偶然がきっかけで、当時の団員の一人と再会した作者。自身の記憶を思い起こしながら、つてをたどって他の団員とも会い、インタビューを重ねていきます。それをまとめ、在りし日のサーカスの姿を描いたのが本作です。

 そのサーカスというのがキグレサーカス。わっ、懐かしい! わたしがこどものころ、木下サーカスと並んでよく知られたサーカス団でした。廃業してたのね・・・(2009年だそう)。

 子どもが遅くまで外を遊んでいると「さらわれてサーカスに売られてしまうよ」なんて言われることは、わたしの世代ならあったんじゃないかしら。そんな風に見られていたことから、サーカスに所属していた人は外部の人にはなかなか本音を言わないそう。

 実際、外部の人間には想像しにくい暮らしです。日本中を巡業で回る旅の生活。テントで寝泊まり。団員の子たちは転校を繰り返す。夜はショーのために飼っている動物たちの鳴き声が響き、昼は観客を楽しませるための空間が演出される芸の世界。サーカス独特の団員同士のきずな・・・。

 不思議な、おとぎ話の中の村のことを聞いているような気分になってきます。今からそう遠くない時期まで、こんな別世界が身近にあったとは。気がつかないものだとしみじみ思います。

 とても興味深い内容でした。