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開店休業の記

今日の本

イギリス現代史

 『イギリス現代史』(長谷川貴彦:著 岩波書店)、読了。

 Ronnie Lane や Faces の本を読んでいて、彼らの生まれ育ったイギリス、特に第二次世界大戦後のかの国の社会状況をもう少し知っておきたいなと思い、よい本はないかと探して見つけた本です。

 かなり目的にかなった本でした。範囲は第二次世界大戦を起点とし、本書出版直前の2017年総選挙まで(当時の首相はテリーザ・メイ)となっています。著者はイギリス近現代史の研究者です。

 戦後のイギリスは従来、「衰退する老大国」というような形容で語られることが多く(わたしの記憶だと1980年代あたりまではたしかに日本でもよく言われていました)、当のイギリス人たちもそう思っていたようです。しかし、経済から見ると戦後も成長は続き十分豊かな国であり続けていたので、その見方は当たっていないそうです。

 それでも「衰退」が言われ続けていたのは、早い段階で高い経済水準を達成していたため、後続の諸国と比べると相対的には低成長であったこと、それと戦後、植民地が次々と独立していったことから、「帝国」としてはたしかに崩壊してしまったという現実からくる喪失感が要因ではないかと考えられるとのこと。

 実際はそれなりに豊かであったからこそ、ポップミュージックに代表される消費文化が花開き、経済的弱者であった労働者階級の文化が注目されるようなったという側面があるようです。ううむ。

 戦後のイギリス政治家で一番印象に残っている人といえばやっぱりサッチャーなんですが、彼女の新自由主義的な政策・サッチャリズムについては批判的です。この前読んだ『絶望を希望に変える経済学』でも、サッチャリズムやレーガノミクスは経済成長にはさして寄与しなかったが格差拡大には大きな影響を与えた、ということが書いてあったような。さて。

 一時期、自民党のキャッチコピーとして「この道しかない」なんていうのをよく聞きましたが、あれって先にサッチャーが使ってた言葉なのね(138ページ)。「クール・ジャパン」(豆腐のかどに頭ぶつけて死にたくなるくらい恥ずかしい言葉だ・・・)も「クール・ブリタニア」のパクリだよな、きっと。情けないというか、センスがないというか・・・。

 200ページほどの新書ですので、あくまで概説、突っ込んだことを知りたければさらに他書をあたるべきですし、政治史中心なので文化風俗については特にそうですが、まずは基礎知識を、というのであれば、読みやすいですし、よくまとまっていると思います。

 ブレイディみかこ姐さんの諸作の背景を知りたい、という人にも向いているのではないかと(本書の参考文献に『ヨーロッパ・コーリング』と『子どもたちの階級闘争』が入っています)。