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開店休業の記

今日の本

宗教の起源

 『宗教の起源』(ロビン・ダンバー:著 小田哲:訳 白揚社)、読了。

 原題は "How Religion Evolved" で『宗教はどのように進化したか』というところでしょうか。いずれにしてもスケールの大きなテーマです。

 著者はイギリスの人類学者で、親密な人間関係を安定して維持できる集団の人数は150人前後と推定する「ダンバー数」の提唱者として知られています。本書においても、このダンバー数が重要な鍵となっています。

 なぜ宗教は世界のどの地域にも普遍的に存在するのか(歴史的に宗教がまったく存在しなかった民族あるいは社会は知られていない)、そしてこんなにも数多くの宗教がなぜ存在するのか、宗教を持つのは人間だけか、人間の認知機能は宗教とどうかかわっているのか、等々、宗教についての根源的な問いを考えていきます。いわゆる人類学や宗教学分野の成果だけでなく、歴史、心理学、進化生物学、社会学、脳生理学まで動員した幅広い考察が行われており、ついていくのはなかなか大変ですが、それだけに読み応えも十二分にあります。

 近年、日本で社会問題として浮上してきたカルトについても1章設けられており、実在のカルトにみるその形成過程、カルト指導者に多く見られる特徴、カルト指導者に追随する信者の心理など、参考になります。

 非常に刺激的な読書となりました。