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開店休業の記

今日の本

シニア右翼

 『シニア右翼』(古谷経衡:著 中央公論新社)、読了。

 日本の右傾化の牽引車は、若者ではなく、現在50歳以上のシニア世代だ、と推定する立場からの分析。著者は作家・評論家で、1982年生まれだそうなので、どちらかというと若者に近い世代ということになります。で、以前は右翼の論客だったという、本書の書名とは一致しない経歴の持ち主でもあります。

 その過去の経歴に基づく現代日本右翼の実情報告は興味深く、そして実体験によるものだけに説得力があります。

 ただ、論考の部分はどうでしょうか? 免疫の少ないシニア世代に対するネット情報(特に動画)の影響力についてなど、よい指摘も少なくないのですが、全体にやや雑というか、危なっかしさがあるように思われます。

 まず、著者の考える「日本における右翼」の定義からして、異論がかなり出そうな感じですが。ただ、そこは本書に引用された辞書にもあるように右翼ということばは「多義的で厳密な定義を行うことは困難」なので、しかたがないところではあります。

 しかし、「信長ですらその官位は太政大臣であった」とかバサッと書いてしまうのはマズいのでは? 死後贈官は別にすると、織田信長は生前右大臣止まり・・・。超有名人物のことだけに著書全体の信頼度にかかわってきかねないので、もう少し慎重に確認を。

 また、わたしも以前読んだ『ネット右翼になった父』から引用があり、同書の「父」について「あまりにも典型的な」シニア右翼としています。同書の著者も、たしかに当初はそのような見方をしていたようです。しかし、最終的には同書の著者は別の結論に達しています。そのことに触れないのはどうだろう?

 と、まあ、他にもアラはいろいろありそうですが、それもまた一興、議論のたたき台になるじゃないか、と思えれば、なかなかおもしろい本です。

 も一つ印象に残ったのは、右翼時代、せっかく著書を出しても、反応といえば動画出演時のものばかりという状況だったとのこと。著者の落胆、いかばかりか・・・。