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開店休業の記

今日の本

遠野奇談

 『遠野奇談』(佐々木喜善:著 石井正己:編 河出書房新社)、読了。

 柳田国男の『遠野物語』の冒頭に「この話はすべて遠野の人佐々木鏡石君より聞きたり。」とあります。

 本書の著者のことです(鏡石は彼のペンネーム)。『遠野物語』とは別に、著者の文章のうち、今では閲覧困難になった雑誌等で掲載されたあまり知られていないものを集めたのが本書だそうです。

 旅の女神、天狗や河童といった、『遠野物語』と共通するようなお話もありますが、『遠野物語』とは微妙に内容、語り口が異なっていることが注目されます。前述のとおり『遠野物語』は本書の著者の談話が元になっているものなので、実はこちらがオリジナルと考えてもいいのかもしれません。

 村の噂、江戸時代の飢饉などは、『遠野物語』には採られていないものばかりで、こちらも注目に値します。正体定かならぬ異界の伝説ではなく、もっと身近で生々しさを感じる話が並んでいます。ことに飢饉の悲惨さには言葉を失います。

 発表時期が主に大正10年代以降で、民俗学研究とは特に関係のない一般向けの雑誌が掲載先だったこともあるのか、『遠野物語』より文章がずっと現代に近く、読みやすくなっています。

 柳田国男の『遠野物語』は先日、読んだばかり。実はこちらを読んでから、『遠野物語』をちゃんと読んでいなかったことを気づかされた次第。

 『遠野物語』に感銘を受けた方はこちらもどうぞ。