メニュー 蕭寥亭 検索

開店休業の記

今日の本

Had Me a Real Good Time: The Faces

 "Had Me a Real Good Time: The Faces"( Andy Neill:著 Omnibus Press )、読了。

 2011年に出た「史上最強のB級バンド」 Faces の評伝です。

 3部構成で、第1部はメンバー各人の経歴を誕生から Faces 結成まで。第2部は結成から Ronnie Lane 脱退まで。第3部はその後 Rod Stewart の脱退宣言による事実上の解散を経て本書執筆時点までの動向、となっております。加えて、ディスコグラフィー、BBCへの出演記録、コンサートリストに参考文献と、質量ともにこれ以上を望むのは難しいかと思われるくらい充実しています。まさに労作というのにふさわしいもので、80年代以降の再結成を除けば、実質6年ほど活動期間だったバンドについて、これだけの本にまとめたくれた著者に敬意を表したいところです。

 個人的には思うことがありすぎて、さて何から書いたものかと悩んでしまうくらいですが、まず残念なこととしては、2023年の現時点に至るまで邦訳は出ていないということ。とりあえず原書を発売直後に買った上で、ずっと待ってたんですけど・・・。いつまでたっても出ないので、結局買ってから12年後に原書を半年近くかけて読むハメになりました(苦)。

 先に Ronnie Lane の伝記 "Can You Show Me A Dream? The Ronnie Lane Story" を読んでいたのですが、こっちを先に読むべきだったなと感じています。"Can You Show Me A Dream?" はインタビュー等の口述された記録のみから構成されており、関連する解説・補記等がまったくないため、状況がかなり把握しにくかったです。先にこれ読んでいれば、すんなり理解できたところが多かったなと。

 本書はオーソドックスな構成の評伝で、確認可能な事実と関係者の発言を軸に、基本は時系列順に彼らの歩みをていねいに記述していくというものです。内容はとても詳細。当時の音楽業界の様子やメンバーの交友関係や家族についてもわかりますし、興味深いエピソードもいっぱい。

 一つ挙げると、2作目のアルバム "Long Player" 収録の "On The Beach" は、Ronnie Lane と Ron Wood が自宅で飲みながら(結局、ソレかい・呆)作ってカセットテープに録音したものが元だそう。後でスタジオでちゃんとレコーディングしようとしたんだけど、どうしてもノリがうまく出せなくて、しかたなくそのカセットテープの音に Mac の鍵盤をオーバーダビングしたのが、最終的にアルバムに収録されたバージョンになっちゃったということです。道理で "Long Player" の他の曲と音の感触が違うわけだ。あのお気楽な雰囲気はまさに一杯機嫌だったという。これが Faces です(笑)。

 予想はしていましたが、後半は辛い話が多かったです(泣)。

 Ronnie Lane についていえば、事務手続きとか契約とか段取りとか、そういうのに拘束されるのがメチャメチャ嫌いだったんだろうなという印象を受けます。問題が起こるとバックレるし、おまけにあんな顔して(失礼)、一度決めると他人の言うこと聞かない人だったらしく。そういうところが Faces 脱退後の経済的破綻につながったと思われるだけに、「 Ronnie 、もうちょっとちゃんとやろうよ? ねっ?」と言いたくなってしまいます。でも、書類仕事なんかをテキパキ処理できるようなタイプに、あの音楽が作れるかというと・・・、ねぇ?

 Ronnie Lane 贔屓としましては、どうしても Rod Stewart には厳しい目を向けてしまいますが、でも、悪い人じゃないんだよね、きっと。腰の据わらない人っていう印象はどうしてもあるんですが(苦笑)。なんか発言がフラフラしてるし。本書のイントロで著者に早速書かれていますが、もともとはわりと内気な人で、生まれついてのスーパースターな人では全然なかったらしいです。たまたま時代の波にのっかって大成功した人であると同時に、時代の波にあらぬところへ流されちゃった人でもあるような気がしてます。

 Ron Wood は、やっぱりいい人っぽいぞ(笑)。しかし、著者によると、どうも彼の記憶はアテにならないらしい(再笑)。Mac が自伝を出した時、「おまえ、本書くなんて、言ったことなかったじゃねーか・・・。でも、オレ、なんにも思い出せないから、おまえが書いてくれて、それでかえってよかったかもな」とか、自分で言ったらしいです。

 その Mac は、実は暴れ者だったらしい。

 で、Kenney Jones は、本書発表時点ではけっこうな資産家になっていたらしい(詳細不明)。意外!

 等々。

 がんばって読んで、ほんとうによかったです。