
『日本で軍事を語るということ』(高橋杉雄:著 中央公論新社)、読了。
著者は防衛研究所所属の軍事・安全保障論の研究者。
この書名は・・・。これにしたのは、著者かしら? 出版社かしら? どちらにしても、これはいけません、やりなおし。と、わたしは思います。
これだと、軍事・安全保障論にあまり理解があるとは言えない日本(「あとがき」で著者はそう言っていますし、わたしもそうだろうなと思います)で、専門家の立場からそれを語り、理解を得ることの難しさについて綴った本かと誤解しそうです。つーか、「ミスリーディングさせるためにこんな題にしたの? それにしても裨益するところはなさそうだが?」とムダな疑いをかけたくなるくらい、中身は全然違います。
単純に副題の『軍事分析入門』にしとけばよかったのに。あるいは『現代軍事の基礎知識』とか(これだとパクリっぽくなってしまうけど)。つまり、そういう内容です。そして、内容はなかなか良いと思います。
「なぜ軍事の知識が必要なのか」から始まり、現代の戦争とはどんなものか、陸海空それに宇宙・サイバー空間の各戦場の分析、そして日本について、という構成です。
一般向けでわりと読みやすいとは思いますが、おもしろおかしくウケを取りに行った文章ではなく、大学の〇〇概論のテキストっぽい、手堅い感じです。
特に興味深かったのは今年度(2023年)の国家予算で論議を呼んだ防衛費の大幅増額について。今年の7月に出たばかりの本なので、そうしたことにも触れています。この増額分は部隊の増設や新兵器導入に使われるのではなく、燃料・弾薬・修理用部品等の不足解消といった、いわゆる継戦能力の向上に使われる見通しなのだそう。見栄えのする正面装備ばかり優先して、補給が軽視されているというのは、もうずっと前から言われていたのですが(旧軍以来の悪しき伝統?)、ようやく配慮することにしたのは悪いことではないかもしれません。しかし、かかるお金がねぇ・・・。