
『陰謀論入門』(ジョゼフ・E・ユージンスキ:著 北村京子:訳 作品社)、読了。
陰謀論については、わりと最近1冊読んだところなんですが、もう1冊読んでみました。先に読んだのが日本の研究者のものでしたが、こちらはアメリカで原著は2020年に出たもの。
どちらも似た点を指摘していることが多いな、という印象。主題が同じで、どちらも著者が政治学者ということで、観点が共通しているのは当たり前かもしれませんが。
こちらは日本の『陰謀論』ほど直接的にデータの引用はしていませんが、始めに「陰謀」と「陰謀論」という言葉の定義から入るあたり、学者らしい厳格で冷静な論述で、その分、「入門」書というには堅苦しくてやや読みにくいという感じもあります。
著者がアメリカの大学教授だけに、事例はアメリカ中心。なので日本人にはちょっとピンとこない話も。
どんな陰謀論を信じるかはその人の政治的姿勢に左右される部分が大きいが、ジョン・F・ケネディ暗殺にまつわる何らかの陰謀論を信じている人は党派にかかわらず多い、という指摘はアメリカ的でちょっとおもしろい。陰謀論は敗者のものであり、共和党支持者も民主党支持者も、自分の支持している側が選挙で負けると陰謀論を言いつのる点では似たりよったり、という指摘も。「陰謀論」って、やっぱり「ご都合主義」と言い換えてもいいんじゃないかという気がしています。
著者が「陰謀論」に肯定的な意味も認めているのは意外でしたが、なるほどと思わせる意見でもあります。
本の内容とは別にふと思ったのですが、創作の世界では、子ども向けのヒーロー物から大人用のシリアスなお話まで、「陰謀論」的なスジで構成されているものであふれているよな、と。実はそもそも、われわれは「陰謀論」的なものが大好きなのではないか、と。