
『キヴォーキアン先生、あなたに神のお恵みを』(カート・ヴォネガット:著 浅倉久志・大森望:訳 早川書房)、読了。
カート・ヴォネガット生誕100周年記念刊行だそうです。えっ!? ヴォネガットは1922年の生まれ・・・、わあ、そうだ。
長編はすべて、短編もほぼすべて翻訳・刊行されたはずで、一体どんなものが出たのかと思いましたが、前半はニューヨークのラジオ局の番組(1分半くらいの短いものだったそう)の台本を集めたもの、後半は1998年に行われた作家リー・ストリンガーとの対談です。いずれも本国ではヴォネガットの生前、すでに出版されていたものだそう。ただし、本国では別々に出版されたそう。そっちの方が自然かな、台本と対談ですから、性質としてはだいぶ異なるもので、一緒にしていいんかいなと思わないでもないですが、日本語で読めるならありがたく、読みます。小説以外の、こういうものまで翻訳されるあたり、日本でのヴォネガット人気は根強いのだなと感じます。
台本の方は、ヴォネガットがリポーターとなって、医師の協力の下、臨死体験をして一時的に天国まで行き、そこにいる有名無名の故人にインタビューするというもの。1回分につき2〜3ページほど。小噺集みたいな感じになってます。元々ヴォネガットは短いエピソードを連ねて長編に仕立てるといった手法を使っていた人なので、違和感がありません。天国の故人に対するインタビューという設定も、ヴォネガットらしい。
対談の方も、だいぶ年齢が下のリー・ストリンガーをヴォネガットが引っ張る感じで、ここでもヴォネガットらしさがよく出ています。
前後半合わせても150ページ足らずと、読み応えの点では彼の長編には及ぶべくもありませんが、久し振りに彼の文章、語り口を楽しめました。