『台湾の少年 1〜4』(游珮芸・周見信:作 倉本知明:訳 岩波書店)、読了。
台湾の現代史を一人の台湾人の人生を通じて描き出したものです。
1930年、日本統治下の台湾で生まれた男の子・蔡焜霖は本好きに育っていく。彼が十代となったころ、支配者であった日本は戦争に突入し、台湾も否応なしにまきこまれて、焜霖たちも耐乏生活を強いられる。日本の敗戦により中国に復帰することになり、喜ぶ台湾の人々だったが、それも束の間、新たな支配者となった国民党の下での暗い時代が始まり、焜霖の命運も暗転してしまう・・・。
ケレン味のない落ち着いた絵と展開は、マンガとかコミックというより、出版社の紹介にあるグラフィック·ノベルという方がふさわしいと思います。日本のマンガにありがちな妄想炸裂的に力の入りすぎた誇張表現はまったくなく、どちらかというと淡々とお話が進んでいくので、日本の人気マンガを基準にする人にとっては退屈に感じるかもしれませんが、よく考えられた各場面の描写や各巻で変わる絵のタッチ・色(1巻の少年時代は薄いピンクが多用されて昔の幼児・児童雑誌を思い出させるような愛らしい感じですが、焜霖が収容所送りとなってしまう2巻では一転して暗色主体の版画風になります)など、新鮮で注目すべきです。もちろん台湾に関心を持つ人にとっては得られるものが多いはずで、ぜひ読んでほしい作品です。
主人公の世代は違うものの、時代が重なる部分があるせいか、やはり台湾の映画『幸福路のチー』を思い出しました。これを読んで感銘を受けた方はこちらもいかがでしょう?
今日の映画 ‐ 『テルアビブ・オン・ファイア』『幸福路のチー』
これは良い本です。