
『昭和金融恐慌史』(高橋亀吉・森垣淑:著 講談社)、読了。
なぜか、ウチに転がっていたので読んでみました。
昭和金融恐慌というと、不況期にあった1927年に当時の大蔵大臣の失言がきっかけで、取り付け騒ぎが発生するなど銀行をめぐって全国的に大きな混乱が起きたことを指します。たしか歴史の教科書にものっていたような気がします。
この昭和金融恐慌について、原因としての当時の銀行制度の前近代的欠陥を挙げ、経過を第一次世界大戦中の好景気にさかのぼって説き起こし、戦後の不況、関東大震災を経て金融恐慌勃発とこれに対応することを迫られた当局の処置を述べた上で、この恐慌が当時の日本経済に及ぼした影響と歴史的意義を検討する、という構成です。
著者の高橋亀吉は東洋経済新報出身の経済評論家、森垣淑は経済学者です。
もとは1968年に別の出版社から出ていたのを、1993年に講談社学術文庫で改訂再版されたものです。1993年といえば、バブル崩壊直後です。どうやら極度の混迷状態にあった金融情勢に対する処方箋を過去に求めた、という再版ではなかったかと思われます。
最初に出たのが50年以上前ということで、文章はやや古めかしい感じがしますが、再版にあたって仮名遣い等は現代風に改められており、わりと明快な表現をとる文体ということもあって、読みにくいということはありませんでした。
わたしはさして経済学の素養を持っていないので、読み通したもののかなりざっくりとしたことしかわからなかったというのが正直なところ。今と制度が違うところも少なくないですし。預金保険制度なんかなかった時代ですし、金解禁が重要なポイントだったらしいのですが、金本位制なんてとっくに過去のものだし。
でも、端々に昭和金融恐慌とバブル崩壊に共通するものを感じます(バブル崩壊については記憶している世代ですゆえ)。本書は昭和金融恐慌の原因の第一に当時の金融機関の前近代性を指摘しているのですが、たしかバブル崩壊時にも日本の企業統治の未熟さ等、同様のことが言われたと記憶しています。金融機関本来の責任を忘れ、浮利に走った点も。
昭和金融恐慌後、中小銀行から流出した預金の受け皿となった大銀行は、不況下の資金需要低迷により運用難に陥り経営悪化、国債投資で対処しようとしたとか、これって昨今の日本のことじゃ?
折も折、アメリカでは銀行の倒産が連続しており、ひょっとしてリーマン・ショック再び? などという不安も広がっています。わたしたちは歴史からちゃんと学んでいるのでしょうか。