
今回はノンサッチの「エクスプローラー50+」から。
"The Sound Of The Sun - Westland Steel Band" 、トリニダードのスティール・バンドの演奏を収めたものです。"Westland Steel Band" とありますが、バンドについてはCD付属の資料には何も書かれていないのでわかりません。録音されたのは1960年代後半と書かれています。今なら学術調査的に日付や録音地、演奏者の経歴とか、とにかくなんでも記録しておくところでしょうが、この大まかさは時代を感じます。
聴いてみると、おお、あれですよ、スティールドラム。あの印象的な音色。今では日本でもすっかりおなじみになりましたが、1960年代だとまだまだ「秘境の神秘的な音楽」っていう扱いだったんだろうなぁ。
CDの解説によりますと、18世紀ごろ、アフリカ系の奴隷によるカーニバルの音楽が源流なのだそう。元々はドラムを使っていたのが、植民地時代の支配層に危険視されて禁止となり、そこで竹を棒で叩いて代用にし官憲の取締から逃れようとしたものの、これも禁止に。音楽を渇望する人々はありあわせの金属片、スプーンやら鍋やら自動車の廃部品やらを使って即席の楽器を作って対抗していたとか。当地では石油産業が盛んだった関係で、入手が容易だったドラム缶を材料に、へこみの大きさや深さを変えることで、音程や音色をコントロールする工夫がなされ、スティールドラムへと発展したのだとか。これが第2次世界大戦のころのことだそうなので、現在のスタイルは意外と新しいものなのですね。
収録の時代を考えればしかたのないところですが、響きの美しさが魅力の楽器だけに、音質が今一つなのは残念なところ。それでも、この涼しげな音は夏に合いそう。