"Can You Show Me A Dream? The Ronnie Lane Story"( John Hellier・Paolo Hewitt:著 Griffiths Publishing )、読了。
一般には60〜70年代のロックバンド・Small Faces や Faces のメンバーとして知られる(しかし、わたしにとっては Faces 脱退以降の Slim Chance やソロでの活動の方が、より重要)ミュージシャン・Ronnie Lane の "oral biography" です。インタビュー等の口述された記録から構成されている伝記です。
著者、John Hellier は1960年代以来の「オリジナル・モッド」で、モッズ関連の出版やイベント企画をしている人物です。"Ronnie Lane Memorial Concert" の企画者でもあります。
もう一人、Paolo Hewitt は音楽関係のジャーナリスト・作家です。
二人で Steve Marriott の伝記も手がけています。
本書は2017年にクラウドファンディングにより出版されました。結局、一般発売はされず、出資者だけに配布された限定版になってしまったようです。そのため、現在、入手は非常に困難になってしまい、残念です。日本のファンは、そもそもそのクラウドファンディングの存在すら知らなかった人が多かったと思われます。できることなら、いっそ、わたしが翻訳して自主出版したいくらいなのですが・・・。
内容は Ronnie 自身を含む50人以上の関係者の発言で構成されています。これまで Ronnie の生涯については、CDのブックレットや音楽誌の稀にしかない関係記事から部分的なことしかわかりませんでしたが、この本のおかげでようやく生い立ちから亡くなるまでをまとまった形で知ることができました。
本としては、内容が関係者の発言のみで構成されていて、それ以外の説明がなく、その背景を知らない人にはわかりにくいこと、掲載されている写真に縮尺比率が合ってないものが少なくない(もったいない!)ことや関係者の発言の時期や出典が不明といった難点はありますが、非常に読み応えがあります。
波乱に満ちた人生、彼が病に苦しんだ後半は特に辛い話が多いのですが、それでも常にユーモアを失わない彼の魅力がつまっています。また、かつての英国の様子やロックビジネスの実情も垣間見ることができ、英語のスラングについても少しばかり知ることになったりと、得るものの多い読書でした。
英文のため、入手から読み終えるまで5年半もかかってしまいましたが、がんばって読んで本当によかったです。