メニュー 蕭寥亭 検索

開店休業の記

今日の本

掃除婦のための手引き書

 『掃除婦のための手引き書』(ルシア・ベルリン:著 岸本佐知子:著 講談社)、読了。

 ルシア・ベルリン、2冊め。先に『すべての月、すべての年』を読んでいましたが、日本で出版されたのはこちらが先。本国・アメリカでは一つの作品集だったものが、この2冊に分けて出版されたということだそうです。

 ほんの数ページから長くても20ページ程度の短編が24収められています。ほとんどのお話が1人称視点で書かれており、さまざまな土地での暮らし、さまざまな職業を経験したという作者本人の流転の生涯が反映されているように感じます。もっとも、本書巻末で評者が指摘しているように、あくまで小説であり、これが作者の人生そのものをそのまま綴ったものと考えてはいけないでしょうが。

 ファンタジックなお話はなく、どれも地に足がついた、どちらかというとあまり楽しそうではない日常の場面を語るものばかり。しかし、凡庸な者なら気にかけもしないような情景を見逃さず、描写はとりとめのないようでいて、切れ味鋭く、容赦なく。

 日本でいうところの私小説に近いような内容です。わたし、どちらかというと私小説は苦手であまり読みません。本書のお話も、わたしの好みかというとそうではありません。なのに、2冊も。

 気がついたけど、作者、わたしの母より歳上なんだ。・・・。