『言いなりにならない江戸の百姓たち』(渡辺尚志:著 文学通信)、読了。
副題が『 「幸谷村酒井家文書」から読み解く』で、幸谷村というのは、現在の松戸市、JR新松戸駅の付近にあった江戸時代の村です。わたしの住んでいる市からすると、松戸市は他県ではありますが隣の隣くらいの位置にあり、旧幸谷村地区も通りがかったことが何度かあります。それでちょっと親近感をもって読むことにしました。
この幸谷村の一家で村役人を務めることもあった酒井家に伝わる古文書をもとに、この時代の圧倒的な多数派、人口の八割を占めたといわれる江戸時代の百姓が、どんな人たちでどんな暮らしをしていたのか、その一端に触れてみよう、という内容です。
著者は松戸市在住の日本近世史・村落史の研究者。
まず最初に江戸時代の百姓についての基礎知識の説明があり、その後に様々な古文書とその内容からわかる当時の百姓の生活の解説、という構成になっています。
研究者が書いた本ですが、文章はやさしくて読みやすく、具体的な事例に基づいての話なので、頭に入ってきやすいです。
地味〜な内容ですが、一般向け江戸期のお百姓入門として、なかなか良いのではないかと思います。
この時代、訴訟は意外なくらい多かったらしいのですが、それでも結局は和解で解決、が大半だったそうで、徹底的な対立は避ける、そこが日本的といいましょうか。