
『ケルトの世界』(疋田隆康:著 筑摩書房)、読了。
古代ケルト人の実像に迫ることをテーマにした本です。ギリシア・ローマの古典文献、考古学的知見、さらには遺伝子解析なども援用しつつ、主に伝承されてきた神話をもとにケルト人とはどんな人々だったのかを考えるというもの。
著者は古代ケルト史を専門とする研究者。
実はなかなか難しいテーマです。というのも、そもそも「ケルト人とは、いかなる人々を指すのか」という定義の段階で学会でも意見が分かれているそうで。
また、ケルト人自身が残した文献資料は非常に限られており、ケルト人ではない外部の人物が観察して書いた記録(有名なカエサルの『ガリア戦記』とか)に頼らざる得ないのですが、それとて潤沢にあるわけではないそうです。
そういった事情もあって、明快な結論は出ようはずもなく、読後、隔靴掻痒の感を免れることはできませんでした。ただ、それは著者の側の問題ではなく、一般向けに入っていきやすいよう神話を切り口に、現段階でとりあえず言えそうなことをがんばって解説したのだけれど、それでもこれが精一杯、というところなのかなとも思います。