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開店休業の記

今日の本

シリーズ戦争学入門 戦争と技術

 『シリーズ戦争学入門 戦争と技術』(アレックス・ローランド:著 塚本勝也:訳 創元社)、読了。

 同シリーズ、3冊め。

 端的な題、大きなテーマにこれ以上はムリというくらいに簡潔な内容。同シリーズ共通です。

 著者はアメリカ海軍出身の研究者で、軍事史と技術史が専門とのこと。アメリカ陸軍士官学校で歴史学の講義を担当したこともあるそうです。

 本書は「戦闘を最も変化させた変数は技術である」との視点のもと、先史時代(!)から現代に至るまでの戦争と技術の関係を俯瞰していきます。

 最初に著者が断っていますが、西洋の歴史中心です。もっとも、わたし個人はそちら方面は疎いので、初めて知ることが多く、かえって参考になりました。

 おもしろいのは、著者が「歴史を通じ、優れた技術は勝利を得るうえで有利な場合が多いが、勝利を保証するものではない」と繰り返し述べていること。

 結論では技術と戦闘の将来について言えることはわずかしかないとしつつ、「技術変化のペースの高まりが20世紀の特徴」とし、「変化がまさに加速しており、その状態が続く可能性が高い」とみています。それがどこに向かうかは予測不可能であるとも。

 ただ、一定の技術革新がなければ、という条件付きではあるものの、大国間の戦争は今後も抑止される可能性が高いと予想している点については、そうであってほしいとは思いつつも、本書が書かれた時点(原著の出版は2016年)よりかなり不穏になってしまった現在の情勢では、かなり楽観的に感じられる見通し、という印象は拭えませんが。