
『ドナーで生まれた子どもたち』(サラ・ディングル:著 渡邊真里:訳 日経ナショナルジオグラフィック)、読了。
自分がDC児(DCは donor conseption の略で、人工授精などの生殖補助医療により「社会的な親」とは別の人物から提供された精子・卵子・胚による懐胎を指し、その結果生まれた子どもを本書ではDC児と表記しています)であると大人になってから知らされたオーストラリアのジャーナリストが、深い苦悩に打ちのめされながら遺伝上の父を探し、その過程で知った生殖補助医療の闇を報告したノンフィクション。
読み終えるのにだいぶ時間がかかりました。やや厚い本だということもありますが、内容が重く、時に胸が悪くなるような事実がいくつも告発されているためです。著者はある種の不妊治療機関を「赤ん坊製造工場」とまで書いています。
生殖補助医療というものが、ここまで杜撰に行われていたということが衝撃的です。そして、その結果として生まれてきたDC児たちの意思や権利が全くないがしろにされてしまっていることにも。
また、この問題に関わってきた医療関係者の倫理観には大きな疑問をもたざる得ませんでしたし、科学者の良心を無邪気に信じてはいけない、という悲しい現実を突きつけられました(できることなら、信じたいのですが・・・)。
著者は、自分はDCによって生まれたけれど、DCは禁止すべきだと考えています。本書を読む限り、わたしも著者の意見に賛成です。