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開店休業の記

今日の本

青年家康

 『青年家康』(柴裕之:著 KADOKAWA)、読了。

 徳川家康研究の成果をある時期に絞って解説したもの。ただ、題から受ける印象と実際の記述の範囲はややズレがあり、家康からかなりさかのぼる松平氏の源流から始まり、家康誕生に至るまで全体の3分の1を費やしています。そこから、今川氏傘下の三河国衆の時期を経て、桶狭間の戦いにおける今川方敗北を契機に独立、松平から徳川へ名字を代えるまでを論述しています。

 今年出た本だけに最近の研究成果が盛りこまれており、従来の通説の観点に修正を求める見解がいくつもあるところが興味深いです。ちなみに、著者自身の本書以前の見解もいくつか、研究の進展により修正せざるえなくなったようで、そのことについて言及があります。

 なお、源氏を称するようになったのは家康からではなく、その祖父の清康からで、徳川同様、新田氏系の世良田を名乗ったことがわかっているそうです。

 また、父・義元の死後、今川家の当主となった氏真が家康の離反を防げなかったのは、よく言われる彼の暗愚によるものではなく、上杉謙信の関東侵攻に対し同盟を組んでいた北条・武田両氏に加勢するために相当戦力を割かなければならなかった上に、遠江国が混乱状態に陥り、家康のいる三河国の保護まで手が回らなくなったから、と著者は考えているとのこと。