『世界を変えた建築構造の物語』(ロマ・アグラワル:著 牧尾 晴喜:訳 草思社)、読了。
『建築の物語』ではなく、『建築構造の物語』というところがミソですね。建築に関する本は少なくないと思いますが、建築そのものではなく、その構造や使われる素材・設備についての、しかも一般向けとなるとそう多くないと思います。そうした地味でなかなか光があたらない分野について、わかりやすい例えや逸話を交え、過度に技術方面に偏らない、バランスの取れた柔らかい文章で紹介してくれるポビュラーサイエンスです。
取り上げられているのは、建物を支える力、防火、素材としての土・鉄・コンクリート、基礎、給水設備、下水など。
著者は建築物の構造工学の技術者。インド・イギリス系のアメリカ人女性です。
建築の世界では欧米といえども、女性はまだまだごく少数派だそうで、そのことにまつわるエピソード(現場ではヌード写真だらけの事務所で仕事をしなければならなかったり、会議に出ると女性は彼女一人だったりとか、ただ、日本では建築業界以外でもそんなのがいくらでもありそうですが)や彼女が尊敬する先駆的な女性エンジニアについての話もあります。
気のせいか、大方の男性の書くポビュラーサイエンスよりも堅苦しくない感じの語り口です。例えにケーキ作りやお菓子を持ってくるところとか。彼女の手によるものかはわからないのですが、時々入る説明用の手書きのイラストもちょっとかわいい感じ。