『アメリカ分断の淵をゆく』(國枝すみれ:著 毎日新聞出版)、読了。
薬物禍、人種差別、尊厳死、温暖化にともなう環境の変化、性犯罪者への対応など、現代アメリカにおいて特に深刻な社会問題について、その現場へ赴き、現地の人から直接取材したことをもとにしたレポート。著者は海外取材経歴の長い新聞記者。
研究者による分析的な視点で述べたものとは異なり、当事者たちの生々しい声を伝えているところがやはり読みどころです。簡単に当事者といっても多様で、その中で一人の記者が接触できる人数には当然限界があり、ここに書かれていることが全てではないと意識する必要はあると思いますが、ただ数字で何パーセント、何万人と客観的な数字「だけ」をあげられていたのではわからないことを、理解するためのよすがになります。内容の濃い報告です。
個人的には、様々な問題の多くが、実は経済的な困窮と他者との関わり・つながりが根っこにあるという点で共通しているのではないのか、とか考えたりしました。