
『大正女官、宮中語り』(山口幸洋:著 川西秀哉:監修 創元社)、読了。
大正天皇に仕えた女官・坂東登女子(旧姓:梨木)から1975年、1976年に計3回聞き取りを行った著者が、その内容をまとめたもの。
以前読んだ『女官』の著者・山川三千子は明治の終わりから大正の初めまで宮中にいた人でしたから、こちらはその後の世代の話です。
本書の著者は方言の研究者で、少年時代に面識があったことから話を聞く機会を得たそう。ただし、著者は天皇や宮中関係の研究者でも取材を専門とする記者・ジャーナリストでもなく、基本的に談話をそのまま掲載したような内容なので、分量のわりには読みにくく、意味が取れないような箇所も少なくありません(多分、そういったところは著者もよくわからなかったようです)。その点、『女官』と比較すると、かなりまとまりに欠いているという印象はあります。また、天皇制の研究者である監修者によれば、談話内容が事実かどうかは注意を払う必要があるとしています。
その一方で、宮中独特の言葉遣いが記録されているという点で貴重と言えるのではないでしょうか。
もちろん、宮中の仕事・暮らし、大正天皇(彼女は「大変頭が良かった」と評しています)や天皇をとりまく人々についての話も興味深い。
貞明皇后のことも出てきますので、『皇后考』を参照しながら読むのもおもしろいかも。
今日の本 − 『女官』
今日の本 − 『皇后考』