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開店休業の記

今日の本

シリーズ戦争学入門 軍事戦略入門

 『シリーズ戦争学入門 軍事戦略入門』(アントゥリオ・エチェヴァリア:著 前田祐司:訳 創元社)、読了。

 著者はアメリカ陸軍大学の教授だそうです。

 著者は「軍事戦略」を、「敵方の戦闘能力と意志を削ぎ、我方の目的を達するまでそれを継続する営み」と定義しています。戦争についてのクラウゼヴィッツの思想を継承しているような定義ですね。訳者は「保守的」と評しています。

 内容は前記の定義に沿って、複雑な軍事戦略の中でも一般的な次の10の類型、殲滅・攪乱・消耗・疲弊・抑止・強制・テロ・テロリズム・斬首・標的殺害について解説することが中心になっています。

 いかめしい題の本ですが、その割に拍子抜けするほど薄いです。抄訳ではなく、原書も120ページ足らずだったそう。あくまで入門書であり、この方面の知識に乏しい初心者が通読できることを強く意識したと思われ、各類型の解説もきわめて簡潔です(訳者曰く「荒技」)。

 ただし、読みやすいとは言えません。元々、「軍事戦略」という分野自体、一般人にはあまりよく知られておらず、取っ付きが悪い上に、研究者らしい堅い書きっぷりですので。

 その一方で、得られるものは十分ありました。特にウクライナで戦争が続いている現在、状況を整理して考えるのに有用だと思います。

 なお、本書は、戦争を多角的に考察することを目的とした『戦争学入門』というシリーズの一冊です。監修者は「平和を欲すれば、戦争に備えよ」という古代ローマの言葉を引いた上で、むしろ「平和を欲すれば、戦争を研究せよ」と考え、本シリーズによって、人類を悩ませ続けてきたが簡単には根絶できそうもない戦争について、理解の一助になることを期待しているとのこと。なるほど、興味深いです。機会があれば、シリーズの他書も読んでみます。