『宇治拾遺物語 上・下』(高橋貢・増古和子:訳注 講談社)、読了。
宇治拾遺物語は鎌倉時代に成立した説話集です。『こぶとりじいさん』や『舌切り雀』の源流と思われるものや芥川龍之介の『芋粥』等の元ネタとなったものなど、多彩なお話が上・下で合わせて197篇収められています。この本は全篇、現代語訳・語釈・参考付きで古文が読めなくてもだいじょうぶ。
こういうものが比較的お手頃値段の文庫で気楽に読めるようになったとは、まんざら悪い時代でもございません。以前だったら、重たい古典文学全集か何かのを手に入れなきゃならなかったんだろうし。
上・下、どちらも800ページ超とかなり量があるので最初はたじろぎましたが、一篇一篇は短いものばかりなので、1日に1〜2篇読んで半年ほどで読み終えてしまいました。お堅い「記録」ではなく、「物語」ですから楽しんで読めます。古典に親しむ取っ掛かりとして良いのでは?
小学生のころ、児童向けの宇治拾遺物語を読んだことがあるのですが、収録されていたのはごく一部だけ。197篇もあるとはね。
下ネタ話もけっこうあるんですよ。昔の人も好きだったのね。そおいうのは児童向けには入ってなかったなぁ。小学生なら喜びそうだけど、当然か(笑)。
別のところで読んだような話がいくつもあるなぁと思ったら、今昔物語などに収録されている話と内容が類似するものが少なくないそう。でも、丸々同じではなくて、語り口に違いがあるらしい。
特に印象に残った話といえば『十三 田舎の児、桜の散るを見て泣く事』です。郷里の実家の作物のことを心配する少年の話です。「親思いの良い子じゃないか」と思ったら、最後の箇所で「風流じゃなくてガッカリだよ」とか言われてしまってます。当時の上層階級(こうした書物を編纂し、読んで楽しんでいたのは、この時代にあってはそういう人たちだったと思われます)の感覚がうかがえますが、しかし・・・。