『屈辱の数学史』(マット・パーカー:著 夏目大:訳 山と溪谷社)、読了。
「屈辱」なんて言葉が使われた邦題からすると、偉大な数学者の過失から起こった悲劇、みたいな深刻な話かと思いきや、原題は "Humble Pi: A Comedy of Maths Errors" で、"Humble Pie" という言葉には「屈辱」という意味がある(題の方は e が抜けて円周率のパイになってますが、数学に関する本なのでシャレなのかしら?)ので正しいのですが、書きっぷりはむしろ "Comedy" = 喜劇の方に近い軽いタッチの読みやすいもので、一般向けです。「数学」といってもそれほど難しい問題は出てきません。著者は元数学教師でコメディアンでもあるらしいです。
数学というか、数にまつわるミスで、どんな予測外のできごとが起きたか、というお話です。ペプシコーラのポイントを集めればジェット戦闘機だってもらえるというキャンペーンで起こった出来事を手始めに、ずれていくカレンダー、完成から5年の間何の問題もなくだれもが渡れた橋が突然落ちた原因、ある社員のデータが繰り返しデータベースから消える事件、等々。
わたしは仕事柄、やはりコンピュータのプログラムに関するところがおもしろかったです。著者は Python を数あるコンピュータ言語の中でも「おそらく最も人に優しい」と評価していますが、現在仕事に使っている身としましては「そこまでかなぁ」と思ったり。brainf_ck なんて言語が存在するとは初めて知りました。500マイル先までしか届かないeメールとか、あ〜、なるほど、ありそう。でも、実際に原因究明しなきゃいけない立場だったら、これ、大変だぁ(恐怖)。
「事故が起きるのは個人ではなく、システム全体に問題があるため」という考え方はとても重要だと思うのですが、なかなか現実の社会はそういう方向にいかないもので。ああ、それこそ、この社会というシステム全体の問題なわけなのですが。
それにしても山と溪谷社って、こういう本を出す出版社でしたっけ?