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開店休業の記

今日の本

チベット幻想奇譚

 『チベット幻想奇譚』(星泉・三浦順子・海老原志穂:編訳 春陽堂書店)、読了。

 チベットの現代作家10人13作からなる短編集です。チベット文学は初めて。

 『幻想奇譚』という題と表紙絵のイメージから、ファンタジックな物語が中心かと思いましたが、そうでもありませんでした。本作の解説にもあるように、むしろマジック・リアリズム的な作風のお話が多いです。表現や話の展開が荒削りという感じを受けるものが多い一方で、その分骨太でちまちまとした技巧に頼らない、なんというか、ゴツゴツとした手ごたえがありました。

 わたしが一番気に入ったのはツェワン・ナムジャの『ごみ』。チベットの中心都市・ラサから排出されたゴミの山で価値のありそうなものを拾い、それを売ることで生計を立てている青年タプンのお話です。これは幻想的というより現代的。チベットというと、外部の人間には神秘的な土地というイメージ(それこそ幻想?)がありますが、現代の世界中の大都市が抱えているのではないかと思われる負の側面がここにも、という印象です。

 チベット文学の長編も翻訳が出ているそうで、機会があったら読んでみようかしら。