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今日の本

カート・ヴォネガット トラウマの詩学

 「カート・ヴォネガット トラウマの詩学」(諏訪部浩一:著 三修社)、読了。

 わたしの最も好きな小説家の一人、カート・ヴォネガットについての評論です。著者はアメリカ文学研究者。題にある「トラウマ」(戦争体験、家族との関係)という観点を軸に、ヴォネガットが遺した長編小説14編を発表順に論じていく、という内容です。

 わたし、こういう本格的な文学論を読むのは初めて。当然かもしれませんが、ヴォネガットの長編の大半を読んでいる人向けの内容です。初心者向けの解説本の類ではないことに注意。幸い、ヴォネガットの長編はすべて既読であったので思い出しつつ、本書も興味深く読めました。

 わたしは、ヴォネガット独特の語り口による「おはなし」が大好きだったので楽しく読み続けたというミーハーな読者でした(つまり、あんまり深く考えていない)ので、ある観点で掘り下げて著作全体を俯瞰して分析するというのはしたことがありませんでした。なるほど、ある作品を読んでとりあえず「いい、悪い」とか「おもしろかった、つまらなかった」とかで終わりではなく、その作品群の中から、ある小説家の姿を浮かび上がらせていくという、これが評論というものか。

 思い出したのですが、ヴォネガットって自分の小説で自身のことを言及しまくるという、特異なひとだったなぁ。以前、読んでいた時は軽く考えていましたが、本人としては、小説の技法という以上に、そうせずにはいられない何かがあったのでしょうか。