
「禍いの科学」(ポール・A・オフィット:著 関谷冬華:訳 大沢基保:日本語版監修 日経ナショナルジオグラフィック社)、読了。
利益よりはるかに大きな害悪をもたらした発明のリスト作り、というアイディアを思いついた著者(医師・医学研究者)が、他分野の研究者などの協力も仰ぎながら選んだ発明のうち、驚きがあり、現在にも影響が残っている7つを紹介するという、ポピュラーサイエンスです。
挙げられているのは次の通り。
・アヘン
・トランス脂肪酸
・化学肥料
・優生学
・ロボトミー手術
・「沈黙の春」
・メガビタミン療法
アヘンのように一般にも選ばれた理由がわかりやすいものもありますが、わかりにくいものもあります。トランス脂肪酸についてはアメリカ固有の事情もあるみたいで、食生活の違いから日本ではもともと摂取量が低く、それほど問題にはなっていないようですし。
優生学とロボトミー手術のおぞましさには、気分が悪くなりそう。
一方、「沈黙の春」(もちろん、かの有名なレイチェル・カーソンの著書です)が選ばれているのは「なぜ?」と驚きを禁じえませんでしたが、著者も彼女の環境保護問題に対する大きな貢献は認めつつ、この本によって DDT 使用禁止が進められた影響は悪い方に極めて重大だったとしています。
7つの発明の章の後に設けられた最終章「過去に学ぶ教訓」は、示唆に富む内容です。コロナ禍が終わらぬ現在にあっては、ことに大事な話かもしれません。