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開店休業の記

今日の音楽 ー 無名なれど侮るべからず、ここに明朗快活ポップあり

Not Fade Away - The Complete Recordings 1964-1982

 昨年末に聴いたパブ・ロックのコンピレーション "Surrender To The Rhythm" は、良い企画盤でした。さらに聴きたくなったバンドがいくつもありました。そのうちの一つが Fumble です。

 "Surrender To The Rhythm" に収録されていた人たちについては、「それなりに知名度があるし、一応聴いたこともある(例:Elvis Costello )」とか「音は聴いたことはなかったけど、名前は知っていた(例:Brinsley Schwarz )」とか「音もグループ名も知らなかったけど、メンバーに知っている人がいた(例:The 101'ers )」とか様々でしたが、Fumble については音も名前も何もまったく知りませんでした。ホントに「誰それ?」って感じ。

 なので、経歴をちょこっと調べてみました。

 前身バンドが1966年に英国南西部で結成されています。メンバーは1940年代後半の生まれで Small Faces とほぼ同世代かな。1971年に Fumble と改名、翌1972年にファーストアルバムを発表。さらに1973年には David Bowie の Ziggy Stardust Tour(!)のサポートを担当し、注目されたようです。続く1974年には2枚めのアルバムを発表と、ここまではイケそうな様子です。が、アルバムはかなり高く評価されたものの、商業的な成功にはつながらず、以降低迷したもよう。それから8年も経った1982年にようやく3枚目のアルバム発表にこぎつけたものの、同年解散しています。

 情報も少なく、あまりパッとした話もなさそうな、そんな Fumble ですが、なんと近年CDボックスセットが出ていました。2020年の "Not Fade Away - The Complete Recordings 1964-1982" です。実は現在入手可能な Fumble のCDってこれくらいしかないらしい。1曲しか聴いたことないバンドなのに、ボックスセットは「ちょっと重たいな」とは思ったものの、他には見当たらないし、これだって最初の出荷分だけで売り切れたら追加生産とかされそうもないもんな、いいや、外すかもしんないけどしょうがない、買っとけ、ということで買いました。・・・って、けっこうヒドい奴だな、オレ。

 内容は3枚のオリジナルアルバムを中心に、シングル、ライブ音源、前身バンド時代の音源、未発表曲などをたっぷり詰め込んだCD4枚組。

 ・・・これが良いのですね、なかなか。めっちゃポップなんですよ。しかも明るい王道路線のです。無名のバンドだからって、地味渋ではないんです。4枚通して聴いても全然重たくない! アメリカのロックンロール/ポップスをベースにしつつ仕上げは英国流、というのが好きな人なら、買っても損はないのでは?

 彼らはロックンロール・リバイバル・バンドとされていまして、たしかにレパートリーには50〜60年代のロックンロール・クラシックのカバーが多いのですが、オリジナル曲もかなりの水準です。ライブを聴く限り、演奏力も十分あるようだし、ボーカルも一般受けしそうなカッコいい声してるし。

 むしろ、これで売れなかったのが謎という気がしますが、厳しい商業音楽の世界では「それでもまだ足りない」ってことなんでしょうか。契約したレコード会社などの営業姿勢によって大きく左右されるって話は聞きますし、やっぱり運もあるでしょうし、質は良くても時流に乗れるスタイルかどうかってのもあるでしょうし。

 無理やりこじつけるとすると、王道過ぎたのが返ってよくなかったのかしら。ロック激動の時代に活動していたのだから。もっと変な音を出してみるとか、大風呂敷を広げてみるとか、してみたらよかったのかも。個性という点では確かに弱いかも。

 ポップなんだけど似たような路線の曲がばかりというのもよくなかったのかな? "Surrender To The Rhythm" に収録されていた "Free The Kids" は素敵な曲なんですけど、このボックスセットの中では粒がそろいすぎていて埋もれてしまっている感じは否定できないし。難しいものだ。

 それと、ちょっとセンスが・・・。各アルバムを再現した紙ジャケ付きなんですが、どれもダセェ・・・。かつての輸入CD屋さんの見切り品セールのダンボール箱に入っているのがふさわしいようなヤツです。音だけでなくバンドイメージも、もちょっとうまくプロデュースしてくれる人が周りにいたら違ったのかも。