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開店休業の記

今日の本

保守主義とは何か

 「保守主義とは何か」(宇野重規:著 中央公論新社)、読了。

 「はじめに」で著者はこう言っています。『はたして、「保守」もしくは「保守主義」について、共通の理解や定義のようなものがあるのだろうか。それとも、ただ、それぞれの人が好きなように使っているだけの言葉なのだろうか。』

 これはまさにわたしが抱いていた疑問です。

 18世紀の英国政治家・エドマンド・バークからT・S・エリオット、フリードリヒ・ハイエク、そして現代へと続く英米の保守主義を概観し、その上で、この流れに連なる保守主義が日本に存在したのか、を考えていきます。

 著者は政治思想史の研究者。

 政治思想の本というと「難解」と思われそうですが、本書は平明かつ堅実な著述で、読みやすい部類だと思います。

 おもしろい。「保守」は、「保守すべき対象の存在」を必要としており、その「対象」を何とするかによって多元的になりがちな側面があり、そのことが「保守」を理解しにくくしているとおぼろげながら感じました。

 と、同時に奇妙な既視感も。

 以前読んだ「ゴシックの解剖」において、「ゴシック」とは盛行する安直な近代合理主義に対する逆襲であり、卑小な人智を超えたものへの畏怖が根底にある、としていました。

 保守思想にも、人間の知には限界があり、むしろ区々たる個々人を超えた偉大な存在(長い歴史によって培われた伝統的な制度など)を尊重すべきとする観点があるそうです。

 どちらもキリスト教思想が背後にあるようで、そのことが日本人にとって理解が深まらない原因でしょうか。それにしても「ゴシック」と「保守」がつながるとは、まったくもって予想外。

 これは良い本です。