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開店休業の記

今日の本

むずかしい天皇制

 「むずかしい天皇制」(大澤真幸・木村草太:著 晶文社)、読了。

 1958年生まれの社会学者と1980年生まれの憲法学者、世代と専門分野の異なる二人の研究者が語り合う天皇制、という対談本です。昨年出た本で、新天皇即位など近年の天皇をめぐる状況を踏まえて企画されたのではないかと思います。読み応えあります。

 主に木村氏が語る、近代以降の天皇制の法制度面の解説は大変参考になります。気になっていた論点についてわかりやすく語られていて、個人的にはそこが一番の収穫。

 一方、大澤氏が中心の歴史的天皇制の解釈については、「まあ、大筋はそんなとこかな」とも思うのですが、違和感も。

 大澤氏は、天皇制が「はるかな昔に始まって(中略)存続してきた」ことを謎とし、そこに「『日本人』という歴史的な実体の秘密が隠されているに違いない」と考えており、そこから本書のタイトルがきているようです。が、わたしはそもそもそのように考えていません。断絶する可能性も十分にあったけど、たまたまなんとか存続できた、というくらいものであって、そこに大いなる秘密があるなどは感じていないのです。

 例えば、「まえがき」で大澤氏は、歴史上もっとも天皇・朝廷に対する「否定の度合いが最も大きかった出来事は、承久の乱だ」とし、この際、後鳥羽上皇等を配流するぐらいで済ませたことをもって「日本人には、天皇制を否定しきることはできないらしい」としています。が、承久の乱の経過をみてみると、これは天皇・朝廷の支配に対する鎌倉幕府の挑戦といったものでは全然なくて、明らかに朝廷の中でもいわば過激派が鎌倉幕府にふっかけたケンカ、でしょう。大澤氏がこの時の北条義時あたりに「君たちはなぜ天皇制を廃止しなかったのか?」とたずねても、「え〜っ、オレら、そんなこと、ちっとも考えてなかったしぃ、なんかいきなり攻撃されてびっくりしちゃいましたけど、あぶない人たちは僻地に行ってもらいましたから、それでおっけーなんじゃ?」てな答えしか返ってこないような気がします。

 承久の乱でもそうでしたが、実権を握っている方からすれば、自分のやりたいことの邪魔をする天皇は取り替えちゃえばいいんだから、わざわざつぶす必要ない気がします。そうでなくても生前退位する天皇は多かったから、さほど抵抗もなくできたわけだし。そうそう、生前退位する例が非常に多いというのは、日本の天皇制の一つの特徴だと思うのですが、そのあたりにあまり言及がなかったのは不満。

 わたしは、天皇制に価値があるとするなら重要無形文化財的な存在としてだと思っているのですが、木村氏曰く「文化財としての天皇という議論は、まったく人気がありません」とのことで、これは残念・・・。

 等々。

 いろいろ考えさせられる本でした。