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開店休業の記

今日の音楽 ー 8時間聴いて

Hard Luck Stories 1972-1982

 重量級です。昨年2020年に出た Richard & Linda Thompson のCD8枚組ボックスセット "Hard Luck Stories 1972-1982" です。内容はオリジナルアルバム6枚にボーナストラックを追加し、さらにデュオ結成前の前史的楽曲を集めた編集盤にライブ盤各1枚と、かつての Thompson ご夫妻のお仕事を網羅しております。

 Richard Thompson 翁の作品はソロを中心にそれなりに聴いてきたんですけど、このボックスセット以前に Richard & Linda Thompson 名義のアルバムはほとんど聴いていなくて、"Shoot Out The Lights" だけでした。最初にご夫妻名義のをどれか聴こうかなと思った時、最後の作品である "Shoot Out The Lights" が特に評価が高かった(米・Rolling Stone 誌の「1980年代ベスト100アルバム」の第9位!など)ので聴いてみたのですけど、その期待ほどには良いとは思えなかったのです。

 収録されている楽曲に当時あまり魅力を感じなかったってのもありますが、それより正直、このアルバムでの Linda の歌は平板で堅苦しいという印象(結婚生活がすでに破綻していたという時期で、彼女の精神状態が出ていたのかもしれません)で好きではなかったのが大きかったです。その後で聴いた Fairport Convention での Sandy Denny と比べても「ちょっとな・・・」という感じで、残りのご夫妻名義のアルバムは聴く気がなくなってしまった、というところです。

 なので、このボックスセットもねぇ、それなりのお値段ですし、買おうか買うまいか、だいぶ迷ったんですけどね。結局、ボックスセットは買い逃してしまうと後になったら入手困難になることが多くて後悔するかもしれないし、聴いたことあるのは1枚だけだからムダは最小限で済むしな、というかなり後ろ向きな理由で決断しました。

 で、せっかく買ったものですから、聴いてみました、タップリと。

 結果。

 ごめんなさい、Linda 。もっと早くに聴いておけばよかった。

 人の心を揺さぶる歌唱という観点ならやはり Sandy Denny の方が、とは思うのですが、Linda の良さは初期の、むしろ軽快で明るくて、実は ABBA の曲なんか歌っても似合うんじゃないかっていう、程よくポップな愛らしさにあるんではないかと。実際、Grand Funk や Kylie Minogue も歌ってヒットさせた "The Locomotion" とかカバーしてるんですぜ。ひょっとして翁が Watching The Dark な世界へ引きずり込んだのか?

 にしても、買ってよかった。特にデュオとしての1枚めの "I Want To See The Bright Lights Tonight" と2枚めの "Hokey Pokey" が好きです。曲なら "Hokey Pokey Song (The Ice Cream Song)" に "Night Comes In" 、"Layla"( Eric Clapton じゃないよ!)とか、他にも多数。

 "Shoot Out The Lights" も久々に聴き直してみると、けっこう良かったです。でも、このボックスセット収録アルバムの中では、評価はやっぱり下の方。自分の好みと権威筋のランク付けは別物だから、参考にしても鵜呑みにするんじゃないよ、という教訓。また一つ賢くなってしまったぜ。

 気になったのは、1枚めのタイトルが "I Want To See The Bright Lights Tonight"(今夜、輝く光が見たい)だったのに、最後のが "Shoot Out The Lights"(その光を消せ)というのは、つまり・・・、考えるのがちょっと怖い。