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開店休業の記

今日の本

ゴシックの解剖

 「ゴシックの解剖」(唐戸信嘉:著 青土社)、読了。

 この本の題を目にして、ふと思ったのですが、建築や美術に文学、さらにはポップカルチャーの領域にまで、広く使われるこのゴシックという言葉、「その意味するところは?」と改めて考えると、ボンヤリとしたイメージがあるばかりで意外とはっきりした答えが出てこないものだなと。では、読んでみよう、というわけです。

 著者は英文学者。英米文学に表れた「ゴシック」を中心に、その思想的背景を探っていきます。

 今につながるゴシックの淵源は宗教改革にあると、著者は考えます。このへんはキリスト教の歴史に疎い一般の日本人には気がつきにくいところですね。

 科学的合理主義、ヒューマニズム(人間中心主義)、民主主義といった近代の主流となっていく思想を揺さぶり、足元から侵食していく闇。圧倒的な存在を前にした時に感じる、卑小な己の恐怖と無力感。無邪気すぎる生の肯定の薄っぺらさ。

 なるほど、逆説的ではありますが、生を強く実感するのは死の恐怖が迫った時であると。

 とはいえ、絶対者の前にひれ伏す、といった思想的経験を積んでこなかった日本人としましては、やはり「ゴシック」は彼岸のもの、という感じをどうしても受けてしまいますが。わたしたちは「ゴシック」じゃなくて「諸行無常」なもんで。