
「独ソ戦」(大木毅:著 岩波書店)、読了。
第2次世界大戦は史上類を見ないほど同時期に世界各地広範囲で戦闘が行われ、ゆえに世界大戦と呼ばれるわけですが、その中でも特に激しく軍民双方に甚だしい人的被害が発生した独ソ戦に焦点を絞った概説書です。
著者によりますと、ソ連末期の情報公開やソ連崩壊後の新資料・新証言の発掘、ドイツ側では戦後しばらく流布された国防軍の将軍たちによる自己弁護的な主張(都合の悪いことはヒトラーのせいにするなど)の検証が進んだことから、独ソ戦について現在では冷戦期までは知られていなかった実態が明らかになっているとのこと。ただ、日本ではそうした研究成果があまり伝わっておらず、依然として古い独ソ戦観が残ったままとなっているため、本書によって理解を少しでも進めたいとしています。
新書1冊、あくまで概説書ですので、独ソ戦の大筋の展開を知りたい人向けの本であり、記述もあまり詳細には踏み込まず、ごくあっさりとしたものです。しかし、そのあっさりした記述でも、時折背筋がゾクリとするようなことが起きていたのが独ソ戦であったようです。