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今日の本

反穀物の人類史

 「反穀物の人類史」(ジェームズ・C・スコット:著 立木勝:訳 みすず書房)、読了。

 著者はアメリカの政治学者。国家の支配下で狭い地域に定住し農業を基盤とする生活形態は、他の生活形態に優越するものだったのか。従来、ともすれば当然と考えられてきたことですが、近年の様々な分野の研究の進展により疑問が投げかけられています。著者は初期国家の成立・滅亡の過程を視点の中心としつつ、従来の標準的な歴史観の問題点を検討しています。

 「定住は必ずしも農業を前提としない」という指摘は、日本の縄文期・三内丸山遺跡などの研究から得られた知見からしても「確かに」と言わざる得ませんし、「重労働を強いられ、常時細やかな配慮が必要な農業は、むしろ人間が農作物の繁栄のために奉仕させられているのでないか」・「国家の成立はある意味、人間の家畜化を伴う」という見解もなかなか新鮮です。

 「狭い土地に多くの人・家畜が集住する都市部は、新たな感染症が発生・蔓延しやすい脆弱な環境」という点は、コロナ禍の現在、言うまでもなく痛感(本書の出版はコロナ禍以前の2017年ですが)。

 また「歴史記録は、一般に都市部エリート層によるもので自分たちを正当化するための主張であり、しばしば支配地域外で別の生活形態を営む人々を不当に賤視する偏った観点が含まれているので、注意が必要」など、他にも示唆に富む指摘多し。