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開店休業の記

昨日の映画

存在のない子供たち

 先週観た「家族を想うとき」の上映前の予告編で、気になった映画があったのでまた行ってきました。

 「存在のない子供たち」、2018年、レバノン・フランス合作。

 レバノンのスラムに両親兄弟姉妹とともに住む少年ゼインは、年齢不詳。11〜12歳くらい。貧しさゆえ学校に行くことができず商店の手伝いや路上販売をして働いている。反対していたにもかかわらず、仲の良かったすぐ下の妹サハルが強制的に結婚させられたことに怒り、家を飛び出す。行く当てのなかったゼインを受け入れたのは、不法移民で赤ん坊を抱えた女性ラヒルだった。彼女はゼインを子守役として息子を託し、強制送還に怯えながらも掃除婦として働く。ある日、ゼインがいくら待ってもラヒルは帰ってこず・・・。

 重い、重い内容です。辛い、辛いお話です。辛さのあまり、登場人物の誰かに責任を押し付けてしまいたくなりますが、それでは問題はなくならないことも伝わってくる映画です。

 何より印象的なのは、悲しみと怒りを同時にたたえた主人公ゼインの瞳。予告編の時点で際立っていました。

 辛くて観ていて挫けそうになりましたが、ほんの少し、救いもありました。

 重さと辛さに耐える覚悟のある方には、観る価値が十二分にあります。

エセルとアーネスト

 同じ映画館で観てみたかった映画が続けて上映されていたので、欲張って観ちゃいました。

 「エセルとアーネスト」、2016年、イギリス制作。

 わたしは読んだことがないんですが、「スノーマン」で知られる絵本作家レイモンド・ブリッグズが自分の両親を描いた同名の絵本が原作です。

 アニメーションですが、冒頭部分は実写でレイモンド・ブリッグズ本人が登場、「わたしの両親は本当に普通の人だった」と語ります。

 そして、時は1928年、レイモンド・ブリッグズの母で当時上流階級婦人宅でメイドしていたエセルと、父で牛乳配達をしていたアーネストの馴れ初めから物語が始まり、二人の結婚、レイモンド誕生、第二次世界大戦勃発、戦後と二人の暮らしの移り変わりを追っていき、1971年に二人が相次いで亡くなるまでを描いていきます。

 個人的にはアーネストを見ていて、Ronnie Lane のことを思い出しました。わたしの聞き違いでなければ、どうやらアーネストはコックニーらしいです。何かというとスラング混じりの歌を歌い踊ります(そして、エセルにたしなめられる)。トラックの運転手で Ronnie にギターをおぼえることを勧めたという Ronnie のお父さんも、こんな人だったんでしょうか。

 レイモンド・ブリッグズが言っていたように、二人は普通の人。普通の人の暮らしを丁寧に描写していくところがとても好ましい。時代の移り変わりや英国ならではという場面(エセルが「うちは労働者階級じゃないわ!」と叫んだり)も興味深いです。

 映画を2本続けて観るのはちょっとしんどいかな、それも「存在のない子供たち」の後では、とも思ったのですが、その対象的な穏やかさが心地よく、ありがたかったです。

 どちらももちろんアタリ。なんだか、最近映画でアタリが多いな♪