メニュー 蕭寥亭 検索

開店休業の記

今日の本

昭和天皇退位論のゆくえ

 「昭和天皇退位論のゆくえ」(冨永望:著 吉川弘文館)、読了。

 わりと最近出た本で、著者も出版当時40歳と比較的若く、昭和より平成を過ごした年月のほうが長いはず。

 終戦直後から当時の皇太子(現天皇)結婚のころまで、たびたび浮かんでは消えた昭和天皇退位問題の経過を追い、わかりやすく解説したもの。

 わたしは著者より歳上ですっかりジジイとなりましたが、そうはいっても現天皇結婚の時には生まれてもいなかったので、この問題についてはほとんど知るところがなく、大変勉強になりました。

 歴史家の中にも、終戦までの天皇が国政・国家指導に極めて強い影響力を持っていたと考える人もいればその権威はあくまで形式的なものにとどまり実権はほとんど保持していなかったとする人もおり、その死から30年近い歳月を経てなおその政治的実像は定まっていないようです。しかし、あの戦争が形式的にせよ昭和天皇の名のもとに遂行されたことは動かせない事実であり、その道義的責任までも否定することは不可能で、昭和天皇退位論の淵源もそこにあります。そもそも君主制打倒を目指す左派勢力のみならず、大元帥つまり最高司令官でありながら敗北の責をとっていなかった(東京裁判では「政治的理由」から起訴されなかった)ことから、旧軍関係者などの右派からも退位を求める声があったとのこと。

 著者は最後に「昭和は長過ぎた」と述べていますが、同感です。