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今日の本

蘇我氏

 「蘇我氏」(倉本一宏:著 中央公論新社)、読了。

 古代に勢威を振るった豪族・蘇我氏の興隆と衰退をたどった一般向け歴史書です。

 非常に重要な存在であるにもかかわらず、記紀においては欽明朝に蘇我稲目が現れるまでごく限られた記述しかなく、謎の一族とみる向きもありましたが、著者はそれ以前に政治的に強い力を持っていた葛城系集団の後裔と考えています。わたしが子どものころ広く流布されていた渡来人説は現在完全に否定されているのだそうで・・・。これだから歴史は油断なりませんな(苦笑)。

 稲目の子・馬子が推古朝で実権を掌握し蘇我氏全盛時代を築いた後、「馬子の孫で専横の振る舞いがあった入鹿が大化の改新で暗殺され、その父で馬子の子・蝦夷も自殺して蘇我氏滅亡」という風に書かれた本をよくみたものですが、実際には蝦夷の弟の系統がその後も朝廷の要職についており、これも正しい見方とはいえなかったのですね。なので現在では「蘇我氏本宗家滅亡」という表現が使われることが多くなっています(苦笑)。

 壬申の乱で一族の有力者を失い、奈良朝期には天皇の妃を出す特別な家柄という地位を藤原氏に奪われる格好になって衰退していくわけですが、史書などにおいて蘇我氏がともすれば悪役を割り当てられがちなのは、取って代わった側の藤原氏の意向が働いているようで。それもまた歴史ということでしょうか。