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開店休業の記

今日の本

平城京に暮らす

 「平城京に暮らす」(馬場基:著 吉川弘文館)、読了。

 題にケチつけることが多いわたしですが、これは内容そのものズバリで好感。出土資料などをもとに奈良時代、都に暮らす人々がどのような生活を営んでいたかを探ったもの。

 まずは記録と遺跡から想像される平城京の風景から。そして、主役は当時おそらく日本で唯一の「都市」であった奈良の都で暮らしていた人々、ただし、いわゆる正史に記載されているような高位高官あるいは著名人はほとんど登場せず、日本では導入されてからまだ日も浅い法(律令)に基づく統治組織の末端で実務に従事する下級官人たちです。

 著者はこの世界では比較的若手になる四十代の研究者。着眼点が上の世代より柔軟になっていることを感じさせる内容です。時代が時代だけにとにかく史料が不足しており、ごく基本的なところでもわからないことばかりということですが、断片的な記録をもとに当時の人々の息遣いを伝えようと努めた結果、地味なテーマでありながらまじめでかつおもしろい著作になりました。「英雄豪傑の話が知りたいんだ!」という人には向きませんが、千年以上前、我らが平凡なるご先祖様たちはどんな都会生活を送っていたのかに興味がある人にとっては微苦笑を誘われる良書です。