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開店休業の記

今日の本

勝海舟と幕末外交

 「勝海舟と幕末外交」(上垣外憲一:著 中央公論新社)、読了。

 幕末を扱った著作は多いですが、これはなかなか異色です。時期は主として1858年(安政5年)から1861年(文久元年)、日本と欧米諸国との外交に焦点を絞ったもの。特にこの期間の勝海舟の動向、そして彼の談話集「氷川清話」で語られているロシア船対馬占拠事件とそこに至るまでの各国と幕府の交渉過程を取り上げたものです。

 著者によれば、当時は秘密外交の時代で、かつ安政の大獄と重なって記録を残すことが危険な時期でもあったため詳細な史料が不足しており、いわば「物的証拠を欠く中で状況証拠の積み上げで立件にもっていった」ような内容になっています。一次史料による実証が重視される現代の史学にあってはややツラい面がありますが、そもそもいつの時代のどういう出来事であれ、史料が十分にあるとは限らないわけで、間接的な手がかりを丹念に追って事実を推定していくことも必要かと思います(もちろん慎重さが求められるところではありますが)。

 幕末といえば志士の活躍や幕府、朝廷、あるいは薩長を代表されるいわゆる雄藩の動きといった国内情勢ばかりに目がいきがちですが、黒船来航に始まる欧米諸国との関係が幕末期を通じて重要な問題であったことをふまえれば、もっと外交活動が注目されてもいいはず。わたしにとっては新たな視点が得られたおもしろい本でした。

 以前、ここでご紹介した松浦玲による伝記「勝海舟」からの引用多し。あわせて読むといいかもしれません(大変だけど)。