メニュー 蕭寥亭 検索

開店休業の記

今日の本

熊谷直実

 「熊谷直実」(高橋修:著 吉川弘文館)、読了。

 平家物語の「敦盛最期」などで知られる平安末〜鎌倉初期の武士・熊谷次郎直実の伝記です。著者は直実の本領があった埼玉県熊谷市出身の研究者。

 直実はかなり個性的な人物であったようです。直情径行とは、この人のことではないかと思うくらい。将軍・源頼朝の御前での裁判でうまく答弁できなくてブチ切れてその場から逐電し、そのまま出家したり、出家した後でも「念仏に気合が入ってねえ!」と仲間を縛りつけて殴ったり(呆)。

 知名度はそれなりに高い直実ですが、実は同時代の三浦や千葉といった大物とは比較にならないくらい小身で、平家追討戦では息子1人と従者(旗持ち)1人と3人こっきりで参加していたそうです。若いころは(狭義の)武士といえるかどうかも微妙な立場でもあったそう。(人数ではむしろ多数派であっても)このクラスの武士については記録がごく限られているのが普通なのですが、直実については前述のような行動からこの時代のお騒がせ男となっていた気配があり、また浄土宗開祖の法然の直弟子でもあったことから、比較的豊富に史料があり、その生涯を追うことが可能になったようです。

 内容はケレン味のない手堅いものですが、やはり直実の個性がおもしろく、またこの時代の武士がどういう人たちであったかを知る上でもなかなか参考になる本です。