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開店休業の記

今日の本

総特集 三原順

 「総特集 三原順」(河出書房新社)、読了。

 1970年代から90年代にかけて、特異な人気があった漫画家・三原順の没後20年を記念した本。代表作「はみだしっ子」を中心としたカラーイラスト、関係者やファンらによる評論・対談等をまとめたものです。

 わたしが彼女の作品を初めて読んだのは高校の時でした。マンガ好きではありましたが、お決まりの路線(スポ根かラブコメかギャグか)・展開ばかりの当時の少年マンガにそろそろ飽きてきたころです。そんな時、たまたま本屋で見かけたマンガ情報誌でちょうどその年の年間ランキングが特集になっていたのですが、わたしの知らない作品ばかり(上位は少女マンガばかりでした)。「おやおや、そういうもんなの?」と思いつつ、そのランキングを参考に新規開拓してみることにしました。長編部門と短編部門に分かれていましたが、上位10作品はどちらも結局全部読んでみたはず。「日出処の天子」(略称「ところてん」もしくは「ずるてん」)や「エロイカより愛をこめて」(まだ続いているの・・・?)、「南京路に花吹雪」に「おんなのこ物語」(作者曰く、タイトルと中身が全然違うイカサマ物語)とか。実際、同時期の少年マンガと比較すると、はるかに多様性に富み、かつ内容も濃いものが多かったです。「はみだしっ子」の派生作品である「ロングアゴー」もランキングに入っていて、それが読むきっかけでした。

 当時、相当な人気漫画家ではありましたが、王道タイプではありませんでした。かなり偏った個性の持ち主で、わたしは彼女の作品が大好きでしたが、人に勧める気は今も昔もあまりないなぁ・・・。

 絵柄がまずクセが強いし(わたし自身、初めて見た時は「何じゃ、こりゃ!?」と感じたのを憶えています)、字多すぎだし(笑)、この本の中でも何度か指摘されていますがあまりに多くのことを盛り込もうとしてストーリーに無理が生じている上に複雑な構成が多くて一読じゃよくわかんなかったり、著者の言いたいことを(かなり無理矢理気味に)登場人物に言わせるためにスジをねじ曲げているようところが見受けられたりセリフ回しがかなり不自然だったり。ファンですが、率直に欠点は多い漫画家さんだったとも思っています。しかし、それでもなお魅きつけられる磁力を同時に持っている漫画家さんでもありました。無二の人、と言っていいと思います。

 「はみだしっ子」雑誌連載時には読んでいなかったわたしにとって、単行本未収録のイラストや雑誌企画ページなどは初見で、ありがたい。

 反面、寄稿者の評論等はどうかな・・・、みんな、思い入れが強すぎる(笑)。ファンに強力な思い入れを持たせてしまう漫画家さんだとはわかっているけど。

 彼女の「笑い」について触れた箇所がほとんどないのも不満! わたしにとって、そこは重要!(わたしはもしかすると「はみだしっ子」本編以上に番外編の方が好きかもしれない)「笑い」は語るには難しいテーマだとはわかっていますが。

 それに「はみだしっ子」以後の作品があまり取り上げられていないのも不満!

 ・・・、ヤだね、これだから思い入れの強いファンは(苦笑)。

 なんだかんだ言っても、かつての三原順ファンで今でもファンなら持っとくべき本では?