
「シリア アサド政権の40年史」(国枝昌樹:著 平凡社)、読了。
2011年から顕在化した反政府運動と政権の対立が未だ終息の気配を見せず、それどころかもはや内戦状態に陥っているともいわれるシリア。つい先日には化学兵器の使用をめぐってアメリカが空爆の検討を始めるなど、情勢はますます緊迫しています。
不幸な形で昨今報道にも頻繁に登場するようになったシリアですが、日本とはあまり関係の深い国ではないので、どうも状況が理解しにくい。ということで基礎知識を得るべく読んでみました。
著者は元外交官で、なんと2010年までシリア大使を務めていたという人物です。本書は2012年6月に出版されており、比較的新しい情報を含んでいます。
日本での報道を耳にしている限りでは、「強権をふるい続ける横暴な独裁者に、民衆の支持のもと抵抗する反体制派」という印象ばかりが浮かんでくるのですが、著者はそうした図式にかなり否定的です。曰く、現政権の改革への取り組みを欧米は評価しない、反体制派はシリア国民ばかりではなく外国から入りこんだ過激派も多い、メディアは反体制派の情報を鵜呑みにする、等々。
著者の見方が正しいかどうかを判断できる能力はわたしにはありませんが、別の視点が得られたという点で本書は有益でした。
現在のエジプトの混迷を見れば独裁政権を打倒すればそれで良しというわけにはいかないでしょうし、失敗続きのように思えるアメリカの中東政策を考えればかの国にはもう少し慎重になっていただきたいと希望する次第です。