
「人生なんて、そんなものさ カート・ヴォネガットの生涯」(チャールズ・J・シールズ:著 金原瑞人/桑原洋子/野沢佳織:訳 柏書房)、読了。
故カート・ヴォネガットの伝記です。原著はアメリカで2011年に発表されており、著作から形成されてきたこれまでの彼のイメージに大きな修正を迫る内容から、賛否ともども非常な反響を呼んだそうです。
わたしはといえば、もともとカート・ヴォネガット自身が語る彼の半生や家族関係(エッセイによく書いていましたし、小説の中で自分を登場させて語ることも多かったです)にやや疑問を持っていたのでそれほど衝撃は受けませんでしたが、想像以上に曲折が多く、かつあまり幸福そうには感じられない生涯に思うところは多々ありました。
わたしもまたこの本を読んで頭の中にあった彼のイメージを修正することになりましたが、そのことによって彼の作品の評価を下げることはありません。むしろ、いつか再読する時に別の視点で物語を解釈することができるかもしれないと期待しています。
600ページを軽く越える分量で読み応えはたっぷり。しかし邦題は正直言ってヒドい・・・。原題は彼の常套句としてよく知られる "AND SO IT GOES" なんですが、も少しなんとかなりませんでしたかね?
ふと、思い出したことが一つ。
わたしが彼の作品を読むきっかけは、漫画家・故三原順が作品の中で言及していたからでした。ヴォネガットよりはるかに若かったのに、彼女は彼より10年も早くに亡くなっています。
合掌。
今日の本 ー 「バゴンボの嗅ぎタバコ入れ」