『イスラームから見た「世界史」』(タミム・アンサーリー:著 小沢千重子:訳 紀伊國屋書店)、読了。
預言者ムハンマドの登場から現代に至るまでの、まさにイスラム側の立場から書かれた歴史です。著者はアフガニスタン出身(!)で現在はアメリカ在住の作家。
650ページ超とかなりの分量ですが、著者が冒頭で強調しているように学術書ではなくあくまで人物中心の「物語」として書かれているため読みやすく、また丁寧な説明によりイスラムは宗教であると同時に社会制度でもあり文化でもあるという著者の主張がよく伝わります。
日本とイスラム世界は歴史的に縁遠く(本書でも日本に言及されることはほとんどありません)、日本人のイスラムについての情報もその多くが欧米経由でどうしても欧米の視点で捉えてしまうことになりがち。そこを見直す手がかりになりうる本です。
個人的には、今まで読んだ本では「イラン・イラクに勢力を持つイスラムの少数派」程度しか書かれていなかったシーア派について歴史的な成立過程から解説されている点、あるいは日本ではあまり知られていなかったイスラム思想の流れを紹介している点などがとても参考になりました。
イスラムあるいは中東に関心のある方はぜひ。おススメです。