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開店休業の記

今日の青空文庫

新版 放浪記

 「新版 放浪記」(林芙美子:著)、読了。

 昭和期前半の作家・林芙美子の自伝的デビュー小説であり、代表作でもあります。

 映画化されたり劇になったりとよく知られた作品ですので「どんな名作だろう?」と読んでみたら、これがほとんど全編「お金がない、仕事が辛い、旅に出たい、お腹いっぱい食べたい、男に殴られた」といったことで埋めつくされていました(呆)。かなり長い作品(新潮文庫版だと500ページを超えるらしい)なんですけど。そんなことばかり書き連ねているのに、不思議と暗さのない妙に愛嬌のある文章です。男がこういうの書いたら陰陰滅滅になりそうだけど。

 日記形式で書かれており、通勤電車の中で少しづつ読むのに向いていました。ただし、必ずしも時系列順に並んでいるわけではなさそうで、時々混乱しました。

 出版された当時としては、かなり際どい内容でなかったでしょうか。「革命」とか「プロレタリヤ」なんて単語も出てきますし。と思って調べたら、やっぱり戦時中に発禁処分をくらっていたそうです。そうだろうねぇ・・・。

 後生としましては、たっぷり描かれている大正期の風俗や東京の様子がおもしろい。上野の鈴本演芸場で猫八の物真似(おそらく初代江戸屋猫八、テレビ時代劇「鬼平犯科帳」等に出演していた三代目の父)を見た、浅草はいいところだなんて言ってる。今は想像しにくいのですが、当時は東京一の歓楽街だったそうですしね。わたしの祖父も浅草が好きだったらしい。そういや、わたしの祖父と作者は歳が近いんだったな。関東大震災のころ、どちらも東京にいたんだ・・・。

尾道の林芙美子銅像

 おまけ。昨年2011年11月に尾道へ行ったときに撮った作者の銅像。尾道は作者が少女時代を過ごした土地で、本作にもたびたび登場します。近くに作者が通った小学校もありました。