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開店休業の記

今日の本

古代中国の虚像と実像

 「古代中国の虚像と実像」(落合淳思:著 講談社)、読了。

 よく知られた中国の古典の記述等に含まれる虚構、粉飾を指摘するという、ある意味勇気ある、別の言い方をすればミもフタもない内容です。著者は古代中国・殷代史の研究者。あとがきに自分が本書で提示した「実像」を「あまり面白味のない歴史だったかもしれない」と言っていますが、わたしはおもしろかったですよ。こういうの、けっこう好きです。

 以前、わたしが読んだ夏王朝についての本では、現在の学界の認識は夏王朝実在説に傾いていると記述されていたように記憶しているのですが、著者は夏王朝の実在には否定的。というか、殷に先行する王朝は存在しただろうが、「夏」という名のついたものではなく、古典に登場する夏についての記録は後代に作られたもので事実の反映ではない、という意見だそうです。なるほど。

 こうした著者の言う「夢にない話」がかえって楽しい。でも、「密談が記載されていることは、事実としてはありえない」とすべて切り捨てにかかってしまうのはどうでしょうか? というのも、その時は秘密の内容であっても二十年三十年経った後なら公言してもお咎め無し、ということも十分ありうると考えられるからで、特に当事者の誰かが長生していたのであれば何らかの形で伝わることも不自然ではないでしょう。その場合でも正確に伝わっているとは限らないでしょうけど。

 相手がエラい人でも(あるいはエラい人ならなおさら)話を鵜呑みに信じちゃイケないよ、という本(笑)。