
「兵隊たちの陸軍史」(伊藤桂一:著 新潮社)、読了。
旧帝国陸軍の制度、日常、そしていかに戦ったかを狭義の兵隊、つまり下士官兵階級の視点から綴った記録。著者は作家で大正生まれ、従軍経験があります。
戦争・軍隊を知らない世代にとっては、かつての軍隊についての良い手引きになりそうです。資料と著者本人の体験の双方に基づいた内容で、読みやすくかつ説得力があります。
印象に残った部分はいくつもありますが、一つ挙げるとすると「軍隊は運隊」という言葉。敗戦以前から言われていたそうです。軍隊では運不運によって兵士の境遇は大きく違ってしまう、一方は過酷な戦場へ続けざまに放りこまれ、一方はほとんど戦闘らしい戦闘もないまま敗戦を迎え、と。
も一つ言うなら、同じ日本人であるのに60数年前はかくも違ったのかと。別の国の話のようです。戦後の軟弱世代のわたしには、とても旧軍の兵隊は務まりそうにないです。そして務まらなくてもすむのは、実に幸福なことだと思えます。